「すにっぷすいすい」の作り方(1)
リーゾの人気サービス「すにっぷすいすい」(アレル特異的PCRマーカー)は、
どうやって作っているのでしょうか?
今回は、企業秘密を、大サービスで公開します!
DNA塩基配列上のわずかな違い(一塩基多型、SNPs、スニップス)について、
塩基種を判定する方法にはいろいろありますが、
その中でおそらく最も低コストで簡便な方法は「アレル特異的PCR法」です。
「アレル特異的PCR法」は、
SNP部位を3’末端にしたPCRプライマーを設計・合成して、
PCRと電気泳動を行い、
「増える・増えない」で判定する、
というシンプルな方法です。
オリゴ合成も通常品でいいですし、
ポリメラーゼも安価なもので十分(むしろ安価なものの方が向いている)、
専用機器の導入も不要、と、
初期費用・ランニングコストともに低く抑えられるというメリットがあります。
では、その作り方を解説します。
まず、アレル特異的プライマーの設計です。
使うのは、おなじみの「Primer3」。
上流側プライマーとして、3’末端の位置にSNPを持つプライマーを指定して、
下流側プライマーを選ばせます。
増幅断片長やTm値はデフォルト値、あるいはお好みで変えます。
上流側プライマーのTm値が合わない場合は、
3’末端の位置はそのままで、長さで調整します。
よさそうなプライマーが選べたら、上流側プライマーに「ミスマッチ」を導入します。
3’末端から数えて3塩基目を、別の塩基に変えます
(セオリーでは、A⇔C、G⇔Tなので、まずはそれで)。
識別したい2種類の塩基それぞれについて上流側プライマーを設計し、
合計3本のプライマーを合成(外注)します。
場合によっては、正方向を諦めて、
下流プライマーの3’末端にSNPを持ってきて逆方向で設計することもあります。
例えば、GC含量が高すぎる(低すぎる)場合などです。
下流プライマーの設計には同じくおなじみの「OligoAnalyzer」などを使って、
相補配列を出します。
プライマーが納品されたら、いよいよPCRです。
アニーリング温度を振ることでうまくいく条件を見つけやすくなるので、
「グラジエントPCR」を行います。
グラジエント機能は多くのPCR機器についてますが、
ついてない場合には温度を変えて何度か試すことで代用できます。
ここで、広い温度帯で特異性(増える・増えない)が出れば問題ありません。
一番よさそうなところで条件を決めて、タイピングに使います。
うまく行かない場合には、症状を見て対策を考えます。
よくある症状1)どちらのDNAも全く増幅していない
→下流側の位置を変えるか、逆向きで再設計します。
よくある症状2)きれいに増えているが特異性がいまひとつ
→ミスマッチの塩基種を変えます。
よくある症状3)高い温度帯まで増えていて特異性が低い
→「増えすぎ」と考え、プライマーを1塩基ずつ短くします。
場合によっては、ミスマッチの塩基種も変えます。
よくある症状4)低い温度帯でも増幅が弱い
→弱くても特異性が十分にあるようなら、そのままプライマーを1塩基ずつ長くします。
特異性が低い場合はミスマッチの変更も加えます。
特異性があり、増幅が弱い場合には、サイクル数を増やすことで解決することもできます。
よくある症状5)目的のサイズのバンドはOKだが、他のサイズに余計なバンドがある
→下流側のプライマーの位置を変えることで解決する場合があります。
タイピングに支障はないので、そのまま使うことも可能です。
これらの対策の結果、特異性と増幅性を兼ね備えたプライマーと反応条件を確立できたら、
完成となります。
(2)では、アレル特異的PCR成功のポイントをお話しします。
Primer3のサイトはこちら
http://primer3.ut.ee/
OlygoAnalyzerのサイトはこちら
https://sg.idtdna.com/analyzer/applications/oligoanalyzer/
「すにっぷすいすい」のご案内はこちら
http://www.rizo.co.jp/SNPs-ici.html
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