理科実験メモ③ 植物の成長と日光や水とのかかわり
小学校での理科実験に詳しいリーゾスタッフに聞く、シリーズ第3弾。
今回は、6年生で学ぶ、「植物の成長と日光や水のかかわり」の実験についてまとめてみました。
植物、日光、といえば・・・光合成!。懐かしい響きですね。
光合成とは何か、については、読者の中にプロの研究者が多いので、うかつなことは書けません。
ごく普通に、「植物が光のエネルギーを使って二酸化炭素から澱粉を作る作用」、
という説明で、お茶を濁させていただきます(誰でも知ってる範囲ですね・・・^^;)。
実験自体は、1時間で終了できるものなのですが、先生(支援員)の作業は2日掛かりです
天気予報を見て、晴天が2日続く日を選びます。
うまく理科のある日に当たるとラッキーですが、そうでないときは、先生と相談して調整してもらうそうです。
まず、実験前日の昼過ぎに、花壇で育てているジャガイモの葉っぱ3枚に、1枚ずつ、アルミホイルをかぶせます。
3枚の葉っぱのうち、「ア」はそのまま、「イ」は端に四角の切り込み、「ウ」は端に三角の切り込みを入れてから、ホイルをかぶせます。
後でどれだかわからなくなると困るので、ホイルにマジックで「ア」「イ」「ウ」と書いておきます。
簡単そうに聞こえますが、やるのは6月~7月の晴天の日。
しかも日当たりのいい花壇にしゃがんでの作業。灼熱です・・・。
1班に3枚なので、9班×2クラスあると、54枚もの葉っぱにアルミホイルをかけることに。
もう汗だく。そのうえ、枚数が多いとちょうどよい大きさの葉が足りないことも。
ここで、「・・・1班あたり2枚ずつでもいいんじゃないか?」と悪魔のささやきが聞こえたりして。
でも3枚であることには、実は非常に重要な意味があるのです(後述)。
ともあれ、前日の作業はこれで終了です。
実験当日の朝(1時間目のあたり)に、「ア」の葉っぱをアルミホイルごとつみとり、涼しい場所に保存しておきます。
「イ」の葉っぱは、アルミホイルをはずします。
「ウ」は何もせず、そのまま(アルミホイルをかぶせたまま)にしておきます。
できればその状態で、4~5時間、日に当てることができれば理想です。
そして4時間目、理想的には5時間目か6時間目の理科の授業になったら、
「イ」「ウ」の葉っぱを摘み取ってきて、保存しておいた「ア」と一緒にします。
いよいよ実験の開始!
1)3枚の葉っぱを、ビーカーに入れたお湯に浸し、火にかけて2~3分軽くゆでます。
⇒ 葉っぱをやわらかくし、ヨウ素溶液がしみこみやすくするためです
2)葉っぱをお湯から取り出して水にさらし、水気をきります。
3)シャーレに入れたヨウ素溶液に葉っぱを浸し、色の変化を観察します。
さて、どうなるのが正解だか、わかるでしょうか?
(ちょっと考えてみてください!)
この実験、一見簡単そうですが、いろいろと落とし穴があるそうです。
×火にかけるときに、マッチをすれない子が多い
⇒マッチの使い方を練習させたいが、時間がないのでとりあえずつけてあげる
×ゆでるのに、水からだと時間がかかりすぎて間に合わない
⇒職員室でお湯をわかしてポットに用意しておき、お湯からゆでるのがポイント
×2)で、水分をちゃんと取らないと、ヨウ素溶液が薄まってしまいうまく染まらない
⇒ざら紙(懐かしい響き)を用意しておく
×ヨウ素溶液を配るのが早すぎると、分解して染まらなくなってしまう
⇒直前についでまわる必要あり
×ヨウ素溶液は2倍~5倍に薄めるが、薄すぎると短時間で染まらない
⇒教科書の写真よりも濃い目にするのがコツ
時代の変化を感じたのは、最近はアルコールランプと三脚を使わず、
「理科実験用ガスコンロ」というものを使うんだそうです。
教科書もそれで載ってます。
マッチをすらなくていいので便利ですが、ちょっとお高い(1万円くらい)。
そのため、たいていの学校には、班の数には足りません。
なので、アルコールランプと併用になるんだそうです。
が、従来は4年生の「もののあたたまり方」、5年生の「もののとけ方」で使い方を習うはずだったのが、
今はそこで習うことが少ないため、マッチのすり方、アルコールランプの使い方があやふやなまま6年生に。
う~ん、ガスコンロでいいのかなあ、と古い人間は頭をひねってしまいますが・・・
今の生活では、マッチ自体が姿を消しつつあるので、しかたがないですね。
ところで、この実験の結果は、
「ア」・・・染まらない(緑色のまま)
「イ」・・・染まる(青むらさき色)
「ウ」・・・染まらない(緑色のまま)
となるのが正解です。
なぜならば、
「イ」は日光に当たって、光合成により、澱粉ができているから。
「ウ」は日光がさえぎられて光合成ができず澱粉ができなかったから。
というのは、わかりやすいですよね。では「ア」は何のためにやっているのでしょうか?
実は、「ア」は、いわゆる陰性対照、ネガティブコントロールなんですね。
「イ」が染まるのは、「前の日に出来た澱粉が残っている(日光を遮ることで消える)」と考えることもできますが、
「ア」の葉っぱが染まらないことで、朝の時点で、澱粉はなかったことになり、
その仮説は否定できるわけです。
(対照を置いて実験する「条件制御」の考え方は、小学校高学年から学習するそうです)
というわけで、実はこの実験の重要なポイントは、「ア」の葉っぱの意味をわかってもらうこと。
暑くても、足りなくても、2枚じゃダメってことですよ~。
この実験の成功の決め手は、とにもかくにも、
スケジュール調整(2日連続の晴れの日確保)と、丁寧な下準備。
きれいに結果が出たときは、生徒以上にうれしくなっちゃうようですよ!
蛇足ですが、この実験で使うのは、「ジャガイモ」か「インゲン」の葉がほとんど。
同時期に成長する「ヒマワリ」「ホウセンカ」でもよさそうなのに不思議じゃないですか?
(光合成はもちろんしますし)。
実は、「ジャガイモ」と「インゲン」は、同じ茎に3枚(以上の)葉がつくんです。
班で3枚使うので、ぴったりなんですね(個人的にこの事実はツボでした!)。
光合成って、よく考えるとほんとに不思議で、すごくよくできてるしくみです。
人工光合成がいまだに実現しないくらいですから・・・。
受験問題でも定番のテーマですから、この実験をしっかり成功させて、
イメージとセットで、がっちり理解&記憶させてあげたいですね。
リーゾのHPはこちらです。
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なぜ、葉に切り込みを入れるのですか?
投稿: | 2022年10月 8日 (土) 19時15分
葉に切り込みを入れるのは、識別のためです。
染色の時は、ア、イ、ウを一緒にしてしまうので、どれがどれだったかわかるようにしておきます。
投稿: 管理人 | 2022年10月11日 (火) 07時23分