肉種(豚・牛・羊・鶏)判別キットを作ってみた
ここのところ、「すにっぷすいすい」 のご依頼が少なく、
DNAのわずかな違いを識別するプライマー設計の腕が鈍りそうだったので、
肉の種類を識別するプライマーというのを作ってみました。
(肉種鑑別キット自体は、既存品もあるので目新しいものではありませんが、
特許出願されている塩基配列を避けて、オリジナルで作成してみました)
作り方は、
①豚、牛、鶏、羊、鹿、ウサギ、馬のそれぞれについて、
よく読まれている遺伝子の配列をデータベースから引っ張ってくる
(ここではチトクロームC遺伝子を使い、それぞれについて別々に読まれた
3つ以上のデータを使い、種内変異を拾わないように気をつけました)
②引っ張ってきたデータのアライメントをとる
③それぞれの種で特異的になる配列を見つけ、そこでプライマーを設計する
④豚、牛、鶏、羊、鹿、ウサギ、馬のそれぞれについて、
保存性が非常に高い遺伝子の配列をデータベースから引っ張ってくる
(ここではβアクチン遺伝子を使いました)
⑤今度は、すべてにおいて共通となる配列を見つけ、そこでプライマーを設計する
(DNA抽出の成否を判定するための陽性対照=ポジコン用プライマーになります)
⑥信頼できるお肉やさんで買ってきたお肉からDNAを抽出し、PCRをかけてみる
(DNA抽出は「DNAすいすい-F」で行いました)
⑦予想通りの結果になればOK!
今回は、(肉が入手できる)牛、豚、鶏、羊の4種類とポジコンのみ、
プライマーを合成して試すことにしました。
増幅断片長は、
ポジコン:243bp
牛:321bp
豚:334bp
鶏:531bp
羊:331bp
です。
では、テストの結果です。
【お肉料理のヒントもご一緒に・・・】
まずは豚。
材料は自家製のパンチェッタ(豚ばらかたまり肉の塩漬け)。
【カルボナーラは市販のベーコンじゃなく、これを厚くスライスしたもので作ると、
本格的な味わいのご馳走になります。
他にもいろいろな料理に使えてすごく便利なので、作っておくといいですよ~。】
対照と豚用だけ増えてます。
このパターンでOKです。
次に、牛肉。
近江牛のシチュー用肉・・・ビーフシチューになる前に取り分けて抽出しました。
【ビーフシチュー、市販のルーで作る場合も、水の1~2割を赤ワインにするとぐっと深みが増します。
時間がかかる印象がありますが、圧力鍋があれば、帰宅してから作り始めても夕食に間に合います。
カレーのように、ご飯と一緒に食べてもおいしいですよ~。】
対照と牛用だけ増えています。
これもOKですね。
次に羊です。
ニュージーランド産の骨付きラム肉があったのでそれで。
【たたいて薄く展ばし、細かくしたパン粉で「コトレッタ」(ミラノ風カツレツ)にして、
ラタトイユをソース代わりにして食べるのが大好きです。ああ、よだれが出そう・・・。】
若干増幅が弱いですが、リーズナブルな結果です。
(牛用と鶏用のところに見えているバンドは、非特異的なものなので無視。)
次に鶏肉。
うっかりサンプリングの前に料理してしまったため、「鶏そぼろ」から抽出。
【ちなみに鶏そぼろには、鶏ひき肉200グラムに対し、たたいた梅干1個分と、
九州人なら外せない「柚子胡椒」を耳かき1杯分、隠し味に入れるとおいしいです。】
調理済みの材料ですが、DNA、取れてるでしょうか?
おお、ちゃんと取れてました。
対照と鶏用のみ増幅で、パターンもOKです。
というわけで、4種類とも大丈夫なようです。ポジコン(対照)もすべて増えてます。
では、冷蔵庫にあるものでもう少し。
まずはウインナーソーセージ。パキッといい音がする、あの銘柄です。
さすがに豚肉だけ増えました。
もうひとつ、パック入りのハムです。
ドラッグストアのチルドコーナーですごく安く売っていたものなので、ちょっと不安。
こちらもちゃんと豚だけ増えました。
ちょっとつまらない結果ですね・・・。
合いびき肉で作ったハンバーグとかで試せばよかったです。
以上、いかにも簡単にできたように書いてますが・・・
実際には、マルチバンドになったり増幅しなかったりで、
2~3回設計しなおしたプライマーもあり、それなりに苦労しております。
鹿、馬、ウサギのプライマーも設計してあるので、肉が手に入ったら、
それらもやってみたい!と思います。
(その前に、ご注文がたくさんきて忙しくなる方がいいのですけれどね)
今夜はお肉料理で決まりですね!
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